富士ゼロックス株式会社

Misa Hishida

菱田 美沙さん

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Akemi Hori

堀 明美さん

様々な可能性にチャレンジしてこそ自分に合った道が見つかる

役員と入社5年目社員が職場の魅力を語る

複合機を中心とするオフィス機器や、ソフトウェア、ネットワークサービスなどで知られる富士ゼロックスを経て、現在富士ゼロックスの関連会社で、女性役員として活躍している堀明美さんと、入社5年目の菱田美沙さんに、会社の魅力やキャリアパスの築き方などを語っていただいた。

 私が新卒で就職したのは、男女雇用機会均等法が施行される前のことでした。女性が一般企業に就職するのはとても難しく、入社しても男性社員のお茶の用意をするのは女性社員の仕事、女性のデスクは男性よりも小さいといったような時代だったのです。私は、大学で言語情報処理を専攻しましたが、当初はコンピューター・プログラミングとは異なる分野の仕事をしていました。就職情報誌で富士ゼロックスがパソコン・ワープロなどの女性インストラクターを募集していることを知り、社会人3年目に思い切って転職することにしました。

菱田 私は大学院で機械工学を専攻しました。女性の少ない分野ではありますが、女性であるから不利だと感じたことはありません。機械メーカーを志望し、就職セミナーやOB・OG 訪問で社員と会った経験から、富士ゼロックスへの入社を決めました。仕事について生き生きと語る様子が印象的だったのです。主力商品である複合機は、自動車や家電のように人の生活に密着した商品というわけではありませんが、だからこそ、「その商品があるとうれしい、役に立つという付加価値をつけたい」という前向きな姿勢に共感したのです。

菱田 美沙 さん

富士ゼロックス株式会社 採用育成センター

大学院修士課程修了後、新卒採用で入社。大学での専攻は機械工学。4年間技術職として複合機開発部門で静音設計を担当したのち、2016 年4 月より採用育成センターに異動。現在は新卒採用と新人の育成に従事している。

私の息抜き

週1回のパーソナルトレーニングを欠かさない。週末には同期の友人と遊びに出かけることも

 富士ゼロックスでは、男女共通の育児休暇制度などが次々と整備され、現在、女性にとって大変働きやすい職場になっていると思います。女性のマネジャーやワーキングマザーも多いですね。

菱田 職場が和やかな雰囲気で、技術系でも、それぞれが自分の仕事だけこなしているというのではなく、上司がしっかり目を配ってくれ、チームで仕事ができるところがうれしいですね。

コミュニケーション能力はあらゆる職務に必須

 入社直後に携わっていたインストラクターやマニュアル制作の仕事にはある程度満足していたのですが、会社の主力事業にまつわる業務を手がけてみたいと思い、社内公募に応募して商品企画部門に異動しました。その後、設計・生産・マーケティングの連携を取る商品開発推進を担当するようになり、「この仕事は私に合っている」と実感することができたのです。コンピューターに限らずテクノロジーは日進月歩なので、大学で学んだことがその後の企業での業務にそのまま役立つケースは少ないと思いますが、基礎となる論理性やスケジュール管理能力などは、計画的なプロジェクト管理業務に役立ちました。また、プロジェクトの全体を俯瞰し、業務を並行して進めるという仕事には、男性より女性の方が向いていると感じました。

菱田 私は大学で学んだことが比較的業務と結びついていたのですが、男性技術者の、一つのことにこだわって突き詰めていく姿勢は、女性である私にはないものだと感じていました。どちらかと言えば、人と会って話をし、互いに意見を交わすことに、私は魅力を感じる方です。

 コミュニケーション能力に長けているということは、技術職にも営業職にも必要ですよね。その点で女性は少々有利かもしれません(笑)。

菱田 開発部門にいても、できるだけ自分から他の部門の社員の話を聞きに行くようにしていました。私は主に、複合機から発生する音に特化した仕事をしていたのですが、“Voice of Customer”というお客様から寄せられた声の記録にも目を通すようにしていました。技術関連の仕事だけをしていると、目標値の実現に迫られ、「本当に自分に達成できるのだろうか」と焦りを感じることもあります。しかし、実際にお客様の声を聞いている営業社員から「うちの機械は音の静かな複合機としてお勧めできる」といった話を聞くと、自分のやってきたことがちゃんと使ってくれているお客様に届いているのだと、とてもうれしく思いました。

行動する力が成功に結びつく

 まだ入社して日の浅い社員が、「今の部署の仕事は私に向いていない。もっと自分の専門を活かした仕事がしたい」ということがありますが、早いうちから一つのことにとらわれてしまうのはもったいないと思います。与えられた仕事をコツコツとこなせばそれに対する評価は残りますし、実績を積むことで、次のステップにもつながります。仕事を5年スパンで考えられるとよいのではないかと思います。

堀 明美 さん

富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社 常務執行役員

中途採用で富士ゼロックス入社。マニュアル作成チームのリーダーなどを経て、商品企画部門へ。30歳代後半より、数々の商品開発推進を担当し、マネジャー、グループ長などリーダーとして活躍。営業部長、商品開発部長を経て、2015年より現職。

私の癒し

趣味は海外旅行。長期休暇を利用してエジプトや南アフリカへ。家で愛猫アスランと過ごす時間も大切にしている

菱田 私の場合、様々な部署を経験したいと考えていました。人と接する仕事が好きなので、就職活動をしている学生と会う機会がある採用育成センターへの異動の打診を、いいチャンスだととらえました。

 規模の大きい企業の利点は、ある程度の期間を経て異動があるところです。今の仕事が向かないと思ってもまた別の部門でやりがいを見いだすことが可能ですし、それまで興味がなかったことをやるようになっても、種々多角的な仕事を経験することで、そこで自分の思いがけない能力を発見することがあります。

菱田 私はまだ自分がどのような仕事に向いているのか、はっきりとした自覚はないんです。昨年結婚したばかりで、これから出産を経ても仕事を続けていきたいとは思っているのですが、長期間仕事を続けていくためには、モチベーションをどのように維持すればよいのでしょうか。

 「継続は力なり」です。長い間仕事をしていると、体調を崩したり、精神的につらくなったり、プレッシャーに負けそうになったりすることもあります。私は病気のため1年ほど休職せざるを得なかったことがありました。しかし、「禍福はあざなえる縄の如し」。よいことも悪いことも、より合わさった縄のように、代わる代わるやってくるのです。自分のキャリアを長い目で見て、「プレッシャーがあ る方が、やりがいがある」と、ポジティブに考えてきました。

菱田 堀さんのお話を伺っていると、やはり行動する力が大切なのだと感じます。迷っていて何もしないのではなく、自ら考え、計画し、行動に移すことが大切なのですね。

 よく女性だから損をしたこと、などを聞かれることがありますが、私は損したことと得したことが半分ずつぐらいあって、どちらかというと得したことの方が多かったかもしれないと思っています。女性の出席者が私一人といった会議も多いですが、多少きついことを言っても、「女性だから」と大目に見てもらっていることはあると思います。一方、以前は上司が女性であることに抵抗を感じていた部下もいたと思います。そういった中で、時には関連部門にバレンタインデーのチョコレートを配ったり、敷居の高い部門の人とはアフター5に宴会を行ったり、といろいろな工夫をして乗り越えてきました。

菱田 今では、女性が上司だと自慢することができますよね。それだけ現代の風潮に合った職場だということですから。私も、自分のロールモデルとなるべき女性上司が近くにいてくれると、非常に心強く感じます。

 最近、非常に優秀な女性マネジャーが、介護のために辞職せざるを得ないかもしれないという話を聞き、社内制度をあれこれ活用して、引き止めることに成功しました。会社の制度や風潮も、社会事情に合わせて変わってきています。

菱田 私は、幼いお子さんのいる女性社員が、在宅勤務制度を利用して仕事をしているという話を聞きました。そういう例を見ていると、これからの自分のキャリアがイメージしやすくなります。

 上手に周りを見て、いろいろな人生や仕事を参考にすると良いと思います。それを今後自分のものにしていくことができるといいですね。「自分で学び続ける力」「積極的に人と関わる力」「人の意見を参考にできる力」は必ず自分を育ててくれます。

菱田 今は、採用の仕事に関わるようになっているので、私自身が学生さんたちの目標となって、富士ゼロックスを支えるリケジョを増やしていきたいですね。学生の皆さんと関わることが多くなりましたが、皆さんにはぜひ、まとまった時間を旅行にあてるなど有効に使っていただきたいです。特に1、2ヶ月のお休みは、私ももっと活用できたのに、と感じることがあります。また、就職活動も大変かと思いますが、自分がどういう人間で何をしたいのかをじっくり考える良いチャンスです。この時期を上手に活用していただければと思います。

取材・文/足立恵子、合津玲子、鈴木理恵子
写真/三浦義昭、川崎聡子

富士ゼロックス株式会社

1962年、富士写真フイルム株式会社(現富士フイルムホールディングス株式会社)と英国ランク・ゼロックス社の合弁会社として設立。複写機やプリンター、複合機、光・電子デバイス、情報・通信機器などの研究・開発・生産・販売を行う。日本、中国およびアジア・パシフィック地域で販売・サービスを展開。

横浜市みなとみらい21地区に研究開発のための拠点「富士ゼロックスR&Dスクエア」を置く。

社員数4万5,397人(2016年3月期連結)、社員平均年齢45.3歳、平均勤続年数20.2年(女性の勤続年数16.5年)。

全社員に「協働タイム制」を導入、全社一律のコアタイムは午前9時から午後3時、育児(子どもが小学校6年まで)・介護に携わる社員については、コアタイムを午前10時30分から午後3時に短縮している。富士ゼロックスアドバンストテクノロジー、富士ゼロックス情報システム、富士ゼロックスシステムサービスなどの国内関連会社がある。