1951年、日米合弁会社として創業して以来、社会インフラサービスの企画・調査から計画・設計・プロジェクト管理まで、トータルなコンサルティングサービスを手掛けるパシフィックコンサルタンツ。空港・高速道路・新幹線・都市再開発といったインフラ整備・拡充から、災害復興・防災・地球温暖化対策まで、多彩なプロジェクトに携わっている。近年、政府開発援助等による海外でのインフラ整備に加え、民間企業のグローバル展開にも注力。今回、国際事業を担う2人に、同社ならではのグローバルな活躍、コンサルタントとしての仕事の魅力、ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティーへの取り組みなどについて語っていただいた。
海外事業チームの草創期を担い、グローバル展開を加速
柴崎インフラ分野に興味をもち、土木工学を専攻したきっかけは、父親が道路標識などを扱う会社で仕事をしていたこと。ただ当時はバブル経済の影響で開発優先だった時代。「このまま乱開発による自然破壊が進んだらどうなる?」という思いから、環境保全に関わる仕事に携わりたいと考えていました。パシフィックコンサルタンツに入社したのは、大学の研究室の同期が入社していたのが契機。在学中にアルバイトで職場を経験し、自由で雰囲気のいい会社だと思ったのが決め手でした。
清野土木分野を志したきっかけの1つは、大手建設会社の「地図に残る仕事」というCM。中でもCMに登場したような長大橋梁に魅かれ、明石海峡大橋の耐風設計に携わった先生の研究室に入りました。ただし、明石海峡大橋以降、国内では長大橋梁の建設はなくなってしまったため、発展途上国で長大橋梁を手掛けてみたいと思っていました。就職の選択肢としてはゼネコン、公務員、コンサルタントなどがある中で、自分には計画や構造計算が向いていると思い、パシフィックコンサルタンツに入社しました。
柴崎入社後は環境部に配属になり、道路などのインフラを建設する時に、環境への影響を調べ、必要な環境保全対策を提案する環境アセスメントを手掛けました。ちょうど新たに環境影響評価法が施行されるタイミングで、財団法人道路環境研究所に2年間出向し、新しいルールに対応した環境アセスメントのマニュアル作成などに携わりました。
清野私が入社した時には、すでに「環境アセスメントといえば柴崎さん」という定評がありましたよね。私は入社後、橋梁設計を手掛ける構造部に配属され、8年間にわたり橋梁設計に携わりました。高速道路の高架橋など、国内の橋梁がほとんどで、長大橋梁のプロジェクトはありません。いつか途上国の人々の生活に大きく貢献できるような橋を架けたいという思いはずっと持ち続けていました。正直、転職も考えましたが、港湾部の中に海外案件を手掛けるグループがあるのを知り、手を上げて飛び込みました。その後、2012年に柴崎さんたちが立ち上げた国際事業部(当時)の一員になることができました。
柴崎2012年、国際展開室ができたときは、わずか2人でした。その後、国際事業部となり、清野さんたちが加わって8人ほどの体制になりました。入社当初から海外を視野に入れていた清野さんとは違い、私の場合、海外事業に携わったのは、たまたまなんです(笑)。
垣根を超える経験を通じて、多様な価値観を磨く
柴崎海外事業に関わるきっかけは、出向先から復帰した後に手掛けた環境省のプロジェクトです。温室効果ガスの排出削減・吸収に貢献するため、日本は二国間クレジット制度(JCM)を提唱しています。その一環として、JCMのパートナー国を拡大していくため、各国への働きかけを私たちがサポートしていました。コロンビアとメキシコで2年間、さらにコスタリカでも2年間にわたって活動しました。その頃、3回目のコロンビア出張中に国際事業部への異動が決まり、そこから人生が転がり出しました。その経験によって、どこに行っても何とかなると、ポジティブに考えられるようになりました。中南米は治安が悪く、出張中には思いもよらないことがありましたが、現地の人々との交流を通じて、コロンビアもメキシコも、今では大好きになりました。
清野私にとって転機になったのが、1人目の産休・育休からの復職後に携わった、英国での港湾建設プロジェクトです。現地のコンサルタントと協業する中で、欧米流の仕事の進め方、働き方を初めて経験しました。中でも刺激を受けたのが、すべての意思決定を議論・ミーティングを通じて行ない、チームでシェアするというプロセス。それまでは私自身、一人で責任を抱え込んでしまいがちでした。しかし、すべてをシェアし、議論してコンセンサスをとるやり方では、一人が責任を被ることはありません。特に、専門性の高い要素技術を持ったメンバーが多数関わる大規模プロジェクトでは効果的です。この経験で、仕事に対する考え方が大きく変わりました。
柴崎国内外の多様な要素技術・ノウハウを持ったメンバーが議論をして結論づけた上で、清野さんがとりまとめてクライアントと折衝するというスタイルですね。英国に限らず、欧米のコンサルタントでは一般的なプロセスのようです。清野さんはそれを、実務を通じて身に付け、チームに展開していきました。2名からスタートした国際事業部も現在では開発プロジェクト部となり、60名以上のチームになっていますが、その手法が若手たちに着実に受け継がれています。
清野初めはイギリス英語が分からなくて、とにかくBBCをたくさん聞きました…というのも、今となっては良い思い出ですね(笑)。足かけ3年にわたる英国港湾プロジェクトを通じて、自分の考え方、仕事の仕方をグローバルに進化させることができました。さらに、以前は官公庁の案件がほとんどでしたが、このプロジェクト以降、海外の民間クライアントの案件も増えています。会社として受注の幅を広げるきっかけを作れたとも思います。
出産・育児と両立しながら、海外プロジェクトを担う
柴崎サラッと語っていますが、清野さんの仕事に対する情熱は伝説的ですよ(笑)。1人目の産休にもうすぐ入るという時に、「取りまとめ役の自分が行かないと」と海外出張に行こうとしましたね。さすがに止められましたけど。復職した後、旦那さんとお子さんを連れて英国に出張したこともありました。開発プロジェクト部のメンバーは若手が多く、これからも出産・子育てを迎える人が出てくると思います。清野さんの後に続いてくれるのではないでしょうか。
清野1人目の子どもの送り迎えについては、朝は夫が、帰りは私が担当していたため、基本的には18時に退社していました。英国とは時差があるので、日本での仕事は夕方の電話会議で締めて、朝までは英国側で仕事を進めるというスケジュールでうまく回っていました。会社の制度面では、フレックスタイム制度やテレワークを活用しています。昨日も、子どもが体調を崩してしまい、在宅で仕事をしていました。開発プロジェクト部には多彩なバックグラウンドのメンバーが集まっているため、多様な考え方が認められやすいというのも事実です。制度が整っていても、実際フルに使えるかどうかは、誰と働くか次第ですよね。
柴崎部のメンバーは、海外に行き、相手国のコンサルタントやパートナー企業とミーティングする機会がたくさんあります。どこの国に行っても感じるのが、驚くほど女性のマネージャーが多いこと。その現実を目の当たりにすると、性別や国籍の垣根なんて意味のないことだと肌で感じられるでしょう。
清野社内・社外、発注側・受注側、国内・国外など、立場が違っても壁を作らないというフラットな姿勢が、グローバルな働き方の基本だと思います。海外では驚くことはたくさんありますが、違って当たり前であって、違いを互いに受け入れてこそ面白いと思います。
柴崎アフリカのサイクロン被災地など、過酷な現場で頑張っているメンバーもいます。彼らが少しでも仕事をしやすくなるよう、社内調整に駆けずり回って戦うのがマネージャーとしての私の使命です。さらに今、国内事業で活躍している社員に「開発プロジェクト部で海外プロジェクトを手掛けたい!」と思わせるような組織にしていきたいですね。夢を必ず実現できる会社だと信じています。
清野これから2人目の産休に入りますが、戻ってきても、海外民間クライアントとの事業をさらに拡大できるよう、社内の体制を固めていきたいですね。女性にはいろいろな制約がつきものですが、勝手に乗り越えろ、ではなく、一緒に乗り越えるすべを考えてくれる人たちで成り立っている会社です!
これがあるから頑張れる!
- 柴崎 宏一郎さん
- グローバルカンパニー
開発プロジェクト部 部長
子どもたちも今や高校生と中学生。一緒に行動することも少なくなりましたが、家族と過ごす時間や笑顔に支えられています。
これがあるから頑張れる!
- 清野 聡子さん
- グローバルカンパニー
開発プロジェクト部
開発・エネルギー室 技術課長
写真は数年前に家族で行った夏の野外フェス。家族とキャンプなど、アウトドアでリフレッシュしています。
- パシフィックコンサルタンツ株式会社
- 当社は、「戦後日本の復興に技術で貢献すること」を目的に、1951年に創業した建設コンサルタントのリーディングカンパニーです。1,200人以上の技術士資格をもつプロフェッショナルが、社会インフラサービスの計画、調査、設計、管理等に携わり、日々の暮らしを安全で快適にすることを目的に事業活動を行なっています。道路や橋、鉄道や空港といった交通基盤整備、近年頻発する自然災害にも対応する国土基盤整備、都市空間づくりや事業運営にも携わっています。また、PFI・PPP分野においては専門的知見と豊富な経験を生かし国内No.1の実績数を誇ります。市場は日本だけにとどまらず、これまでの豊富な実績や課題解決力を生かして積極的な国際展開も推し進めています。
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- 本社:
- 〒101-8462 東京都千代田区神田錦町3丁目22番地 テラススクエア
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- 代表者:
- 重永 智之
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