第21回 国際女性ビジネス会議
昨年の国際女性ビジネス会議の様子。参加者は1,100名を超えた
提供:イー・ウーマン

日本最大級の女性会議
‘Think Big’で広がる可能性

第21回国際女性ビジネス会議が7月18日(祝)、東京・港区のホテルで開かれる。毎年約800人から1,000人が参加する、日本最大級の女性会議。今でこそ女性向けの会議は珍しくはないかもしれないが、同種のイベントとしては最も歴史が古い。

男女間格差は大きな損失

今年の会議は、管理職への女性登用や職場でのダイバーシティ推進にこれまで以上に注目が集まる中での開催となる。政府は「女性の活躍推進」を成長戦略の柱の一つとして掲げ、この4月には、いわゆる女性活躍推進法が施行された。従業員301人以上の企業には、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが義務付けられたのだ。

今年は男女雇用機会均等法施行から30年という節目の年でもある。だが、この国際女性ビジネス会議を主催するイー・ウーマン代表取締役社長の佐々木かをりさんは、日本ではまだ男女間の格差は大きいと言う。

昨年の国際女性ビジネス会議でスピーチする、イー・ウーマン代表取締役社長で同会議実行委員会委員長を務める佐々木かをりさん
提供:イー・ウーマン

一例として佐々木さんが挙げたのは、WorldEconomic Forum(世界経済フォーラム)の「ジェンダーギャップ指数」。2015年の調査では、日本は145カ国中、101位だった。「まだ日本の女性のマネージメントのポジション、給与格差など、数字でみると大きなギャップがあります」

その一方、OECD(経済協力開発機構)が2013年に結果を公表した「成人のスキル調査」で、日本は好成績を収めたと佐々木さんは指摘する。24カ国を対象に行われたその調査では、「日本の成人の読解力と数的思考力の習熟度は参加国中1位」だった。

「ジェンダーギャップ指数」と「成人のスキル調査」の結果を合わせて考えてみると、「日本は世界一教育が行き届いたスキルフルな大人がいるのに、男女の格差が101位。これによって、国は相当な経済損失を被っているとしか思えません」と佐々木さんは言う。

このスキル調査に関するOECD の報告書にも次のような言及がある。

「日本人女性のスキルは活用されていない。読解力と数的思考力におけるこうした女性の習熟度は高いが、労働力参加率は低い」「日本人女性の読解力と数的思考力の習熟度は国際的に最高レベルにランクされる。

……日本は質の高い人的資本が利用されていないことを示している」

佐々木さんは、20代半ばに通訳・翻訳者のネットワークを作り、国際コミュニケーションのコンサルティングを行う会社、ユニカルインターナショナルを設立。仕事をしていくうちに、「30歳前後の女性たちが結婚や出産などをきっかけに組織から消えていく」のを目の当たりにしたという。

「長期的に、そして前向きに仕事をするために、先輩に会いたい、仲間が欲しいと思い、自らネットワークを作り、勉強会や研修を重ね」たことが、佐々木さんが1996年に国際女性ビジネス会議を立ち上げることにつながった。2000年にはイー・ウーマンを設立し、働く女性の声を発信するサイトの運営やオンライン会議「働く人の円卓会議」などを展開している。

どのプログラムも会議の目玉

昨年の第20回会議を「一区切り」ととらえ、“MakeHistory” のテーマで開催した佐々木さんは、今回を「新たなスタートを切るイメージ」にしたいと意気込む。

今年の会議のテーマは“ Think Big”。「今までの延長線上にものがあるのではなく、もっと思考、視野を広げたところにいろいろな可能性があるのでは」と考えたという。「新しい次の decade を作っていくためのリスタート、そういう会議にしたいです」と抱負を語る。

朝10時から夜8時までのプログラムには、様々な分野を網羅した講演や対談などが盛り込まれ、国内外から各界の著名な50人余りが登壇する。

今回のプログラムの目玉について尋ねると、佐々木さんは「どれか一つということはありません」と答えた。

どの登壇者も基調講演を行えるレベルだと胸を張る。

会議は佐々木さんのオープニングスピーチの後、自由民主党の衆議院議員小泉進次郎さんと佐々木さんの「ないものはない」と題した対談でスタートする。続いて、ネットイヤーグループ代表取締役社長の石黒不二代さんによる講演“Beyond the limit”、米iRelaunch の最高経営責任者キャロル・フィッシュマン・コーヘンさんの講演 「40歳のインターン」が行われる。

キャスターの国谷裕子さんが進行を務めるトークショーでは、カルビーの代表取締役会長松本晃さん、野村ホールディングス取締役会長古賀信行さん、アシックス代表取締役社長の尾山基さんが「男性リーダーがつくる新しい未来」について話す。

「重鎮ともいえる男性リーダーたちが、ダイバーシティの重要性をどう考えていて、彼らがアクションを取れば会社は変わるわけで、どう変えていくのかというような話をしてもらいたいです」と佐々木さん。

「決定する力」と題したトークショーでは、インテル代表取締役社長の江田麻季子さん、ジャパンタイムズ執行役員の大門小百合さん、Googleのランドバーグ史枝さんが登壇。続いて「日本に女性総理はいつ誕生するか」をテーマに、自民党衆議院議員の稲田朋美さん、同じく野田聖子さん、作家の幸田真音さんが議論する。

午後1時からは、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢の代表理事を務める小林りんさんの講演「過去の延長線上に、未来はあるか」、続いて文筆家で講演者であるメリッサ・シルバースタインさん、アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ駐日マケドニア共和国大使、NHK World“ Newsline” キャスターの高雄美紀さんによる“ Women in Films” と題したトークショー、イタリア在住でポールエックスジム所属の岡田智子さんとテレビ朝日スポーツ局コメンテーターの宮嶋泰子さんの対談「情熱こそすべて」が行われる。

45分の休憩を挟み、3時からは2部構成の「円卓会議」で、各部5つのテーマに分かれている。第一部では“ Agenda in the World: Work in the World”、“International Education Matters”、「起業でつくる新しい世界」「『マネー』での経営変革」「SNS。一言で社会を動かす」について、各分野の第一線で活躍する人たちが登壇する。第二部では、“Media andWomen”、“Power of Executive WorkingMothers”、「議員になる。政治を変える。」「新しい経済。シェアリングエコノミー」「未来をつくる人事戦略」の各テーマについて議論される。

その後、6時から8時までのネットワーキングパーティーで会議は締めくくられる。

佐々木さんによると、この会議のユニークな点の一つは、多くのスピーカーが途中で帰ることなく、一般の参加者と同じように会場に留まって話を聞き、パーティーで名刺交換を行うことだという。

参加者の満足度は99% 超

さらにこの会議への参加者の特長として、その意識の高さが挙げられるという。

「志が高いと言うと、ずうずうしいですけれど、前を向いていて、何かを学びたいという人が来ています」

と佐々木さんは述べ、「初めて来る、一人で来るという人でも、(開場前に)みんな並びながら名刺交換して、しゃべりながら待っています」と話す。

10時間もの長丁場だが、「全然疲れないんです」と佐々木さん。寝たり、途中で帰ってしまう人もいないそうで、会議に対する参加者の満足度は非常に高い。

昨年の会議参加者へのアンケートでは、実に99.2%もの人が「満足」と答え、一昨年もその割合は99.3%にのぼった。

佐々木さんは今回の会議参加者に向け、「朝から夜まで100% 参加して、熱心に楽しんでください」と呼びかける。

「この会議を作っているのは参加者。傍観者はいらないし、見学者もいらないんです」と語る佐々木さんは、「よく聞く、笑う、感動するとか、そうだなってうなずくのがparticipate ですよね」と「参加」の意味合いを説明する。

その上で参加者が「リーダーシップをとって、これからの日本を、大きければ世界を、少し変えていくようなことをしていかなければならないと思います」と述べた。

会議の詳細は以下のウェブサイトを参照:http://www.women.co.jp/conf/index-j.html

取材・文/亀田雅彰