ダウ・ケミカル日本株式会社
Sayaka Ito
伊藤 さやかさん
Noriko Kajitani
梶谷 紀子さん
理系で学び培った力こそ社会で役立つ人材になる原動力
化学が好きという気持ちが転職を大きく後押し
米国ミシガン州に本社のあるザ・ダウ・ケミカル・カンパニーは、世界最大規模の総合化学品メーカー。その日本法人ダウ・ケミカル日本株式会社で働く梶谷紀子さんと伊藤さやかさんは、ともに他業界で働いたのち、化学に関わる仕事をしたいと熱望し、転職してきたリケジョだ。部署や年齢は違えど、働く女性として、共にリスペクトしあう二人に話を伺った。
梶谷 もともと理系、というか理科が好きでした。特に高校時代に学んだ化学がパズルみたいで面白くて。例えば、酸素は、水素とつくと水になり、炭素とつくと二酸化炭素になる。
梶谷 紀子 さん
バイオサイド部 営業担当マネジャー
2000 年ダウ・ケミカル日本入社。プラスチック事業部の技術サービスを担当するほか、2002 年より特殊化学品営業部の営業担当として特殊アミンや電子材料・化粧品材料などを扱うアンガス事業部担当。アンガス、バイオサイド部日本・韓国地区営業部長、そして1年間の産休を経て2010 年より現職。
女性活躍推進の場
子育てをしながら働く姿は次の世代のお手本に
提供:公益財団法人米日カウンシルージャパン TOMODACHI イニシアチブ
不思議で楽しい世界だなと感じ、大学では有機化学を専攻しました。ただ、在学中、海外にも目が向き留学し、国際的な仕事に興味を持つようになり、気が付けば化学からはちょっと離れた生活になってしまいました(笑)。帰国後、関西で貿易会社に就職したのですが、やはり化学に関わる仕事をしたいという気持ちがわいてきて。そんな時出会ったのがダウ・ケミカルです。この会社だったらグローバルな世界に身を置きながら化学の仕事ができる。そう思い転職を決意しました。2000年のことです。
伊藤 私は高校生のころからメイクアップに興味があり、将来は化粧品を作る仕事に就きたいと思っていました。化学系、薬学系で学べば開発に関わる仕事ができるとわかり、早稲田の応用化学で有機合成の分野を専門に学びました。
就職活動の際も、初志貫徹で化粧品会社を狙いましたが、願いはかなわず……。そこで気持ちを切り替え、医療関係の会社に入り、8年間、営業・マーケティングの仕事をしました。でも、やはりもっと化学に携わって生きていきたいという思いが強くなり、2011年、ダウの門をたたきました。
梶谷 私が最初に就いたのは、プラスチック事業部の技術サービスの仕事です。包装用品などに使われるプラスチック樹脂が主力商品で、用途に合わせてお客様に新しい製品の紹介や、開発のアドバイス、研究所での試作の提案などをしてきました。お客様から課題をいただき、それを一緒に解決していくのですが、当然、技術的な知識も必要ですし、コミュニケーション力も欠かせません。お客様に会った回数だけ勉強になるので、メールや電話だけで済まさず、直接お会いしてお話を聞くよう心がけました。大変なこともありましたが、それもまた勉強になるし、クレームが起きれば、次は起きないように対処する。全てが教科書になったと思っています。
伊藤 私は、イオン交換樹脂のマーケティングを担当しています。例えば「水をきれいにするためのフィルターの中身」といえばわかりやすいでしょうか。我々の取り扱う商品は、幅広い産業で様々な用途に使われています。裾野の広い製品で、例えば食品業界でも使用されています。この業界での代表例は砂糖の精製ですが、他にも機能性食品などに使われる成分の精製に使用されています。イオン交換樹脂は条件を工夫することで幅広い用途開発が可能です。
伊藤 さやか さん
イオン交換樹脂・膜技術事業部 ダウ・ウォーター&プロセスソリューション グローバルマーケティングマネジャー
2011 年ダウ・ケミカル日本入社。ダウのイオン交換樹脂・膜技術事業部で、ダウの高度な機能性材料を食品、製薬および化学業界に応用する任務に携わる。
女性活躍推進の場
化学の知識を生かして活躍する伊藤さん。レクチャーに女子高校生たちが聞き入る
提供:公益財団法人米日カウンシルージャパン TOMODACHI イニシアチブ
お客様のニーズを聞き、それに応えるべくパートナー会社さんとタッグを組んで材料・用途開発して提案します。そうした新規開発プロジェクトに携わる過程で大小様々な新しい発見に出合え、楽しくやりがいを感じています。日頃から我々の商品が直接使用されている産業のトレンドだけでなく、周辺情報、例えば食品であれば「体脂肪燃焼」などにもアンテナを張るようにしていて、お客様の求めているものを敏感に察知できるよう心がけています。
梶谷 化学の力で新しい商品ができ、問題を解決できる現場にいるので、自分が理系の分野で勉強してきたことが、少しでも生かされているな、と思える瞬間があるのはうれしいですね。
伊藤 私も、技術系の仲間が新しい発見をしたとき、一緒に感動できたときは「理系出身でよかった!」と思いました。
時間をかけて一緒にチャレンジしてきたことが成功し製品が完成したときは、何よりうれしいです。仕事には色々な専門分野を持った人が関わりみんなで完成させるものですが、それが私の場合は化学分野だったということです。
しなやかに働く女性たちを会社が全力でサポート
梶谷 今でこそ、女性だからと差別されることはほとんどありませんが、入社したころは、まだ工場や研究所には男性しかいない時代。出向いても、交渉相手だと思ってもらえない経験もたくさんしました。だからこそ、しっかり調べて勉強し的確な発言をすることで、専門知識を持った人間として扱ってもらえるよう努力しました。打ち合せ中、私の言葉を相手がメモに取ってくれれば、ああ、今、価値あることを伝えられたのだと思えます。初めて目の前にいた男性が一斉にメモを取ってくれた時は、本当に達成感を感じました。ダウ自体は、女性を含め多様な人材を活用することに積極的な会社なので、とても働きやすいです。社内にWINという女性活躍を推進するグループがあり、その活動を通して女性の働き方を学び、応援しあえることも大きいですね。
伊藤 はい。WINはWoman’s Innovation Networkの略で、本社で1995年に発足し、日本支部では1999年ごろから活動しています。個人のキャリアや方向性を考え、性別を超えて、効果的に働ける場を作るきっかけになるような活動を展開しています。特に日本支部では男女問わず参加してもらうよう心がけています。私は2014年度に代表を務め、テーマを決めてワークショップを行ったり講師を呼んで経験談をシェアしていただいたりしました。こうした活動も、女性はもちろんのこと、全ての従業員が働きやすい環境を作ったり、女性自身の成長のための手助けになっていると思います。
梶谷 立ち上げからまもない2005年に、私は代表を務めましたが、日本にはあまり馴染みのない活動でしたから、まずはネットワークを広げることに必死でしたね。女性の地位向上ということを声高にやってきたつもりはないのですが、カルチャーとして、男性・女性の仕事差も埋まってきたので、それなりの役割は果たしてきたかなと思っています。私は現在結婚し6歳の子供がいるのですが、薄型PC やルータ ー、携帯が支給され、場所を選ばずに仕事ができる環境があり、フレキシブル・ワーク制度も整っているので、とても助かっています。今は毎朝4時に起床して7時半に出社し、4時に退社するというタイムスケジュールで働いています。上司や同僚もサポートしてくれますし、結果を残せば働き方は任せてくれる、個人をリスペクトしてくれる会社なので、女性にとってはとても働きやすい会社だと実感しています。
伊藤 私は今、自由に仕事をしていますが、将来は梶谷さんをロールモデルにして、仕事と家庭の両立を図りたいと思っています。今年4月からはマーケティングの仕事の幅が広がり、その上司がアメリカ本社にいるので、どうしても夜の会議が増えています。そんなときは朝を遅めにして、働きすぎ・働かなさすぎのないよう、自分の裁量で働き方に責任を持たせてもらっています。もちろん、同僚と密にコミュニケーションを取り、仕事に支障が出ないようにすることも心がけています。我々の部署は、アメリカ本社では女性の比率が高く、女性エンジニアもいます。社員一人ひとりを対等な「人」として接する文化ができている会社なので、そういう意味では先人の方たちに感謝したいですね。
これから就職を考える学生に一言
梶谷 私たちは化学が好き、という気持ちでここまできました。やはり、好きなことを仕事にすることはとても大事だなと、つくづく感じます。ですから、就職を考えている学生さんには、トレンドにとらわれず、自分のやりたいことに全力で取り組んでほしいですね。その先には、必ず幸せが待っていると思いますから。
伊藤 どんな仕事も、一人でやっているのではないことも忘れずに。追い詰められたときこそ、人への感謝、人とのつながりを思い出すことが大事です。そうすれば、素直に人に頼ることもできるので、生意気な女にならず、かわいがってもらえますよ(笑)。それと、大学生の期間は、本気で勉強ができる貴重な時間です。あとで後悔してもその時間には戻れないので、ぜひ、ポジティブな姿勢で、勉強を楽しんでほしいですね。学問だけに集中できる時間は本当に貴重です。自分のために知識を蓄えることに一生懸命になってほしいです。
梶谷 そうですね。そして、学生時代に学んだことが花開くのは、やはり社会に出てから。世の中で結果を出していく、エキサイティングな体験ができるのは理系ならでは。自分が役に立っていると実感できたとき、理系で学んだことをきっと誇れると思います。
取材・文/足立恵子、合津玲子、鈴木理恵子
写真/三浦義昭、川崎聡子
ダウ・ケミカル日本株式会社
世界最大規模の総合化学品メーカーで米国に本社を置くザ・ダウ・ケミカル・カンパニーの日本法人。原料から川下商品まで、統合化された製造体制、6,000種類以上に及ぶ化学製品、多様性に富んだ企業文化を基盤に、4万9,500人の従業員が世界180か国で活躍するグローバル企業。技術革新と科学の力を集結し、清潔な水、再生可能なエネルギー、作物の生産性改善など、世界が直面する課題の持続的な解決に取り組んでいる。日本でも、最先端材料、機能化学品、プラスチック、電子材料、農業化学品など、消費者に快適な生活をもたらす各種素材を提供している。
2016年6月、ダウはダウコーニングのシリコーン事業を完全子会社化。ダウコーニングは、2015年度の売り上げが45億ドル以上、9カ国に25カ所の生産拠点を構え、約1万人の従業員を擁している。
ダウは、2010年からオリンピックのワールドワイドパートナーであり、2020年東京オリンピックにも貢献する。
「ビルディングオートメーション」「アドバンスオートメーション」「ライフオートメーション」の3つの事業を推進し、オフィスや生産の現場、生活といった様々な場面で、「人々の安心、快適、達成感」、地球環境への貢献を実現する。
「お客様と共に現場で価値を創る」ことを掲げ、お客様の新たなチャレンジを支える長期パートナーとなることを目指す。
海外市場においても積極的に事業を展開。エネルギーマネジメント、安全・安心といった市場機会を捉え一層の成長を実現している。山武で100年、アズビルで10年、合わせて110年。アズビルグループは、「人を中心としたオートメーション」、つまり人々を苦役から解放し、喜びや充実感に満ちた幸せの創造を探求することを通じて、これからもお客様の現場で、お客様とともに新しい価値を創造し、様々な課題解決に貢献できる企業集団を目指し、グループ一体となって邁進していく。
- 本 社東京都品川区東品川2-2-24 天王洲セントラルタワー
- 代表者ピーター・ジェニングス
- 連絡先TEL: 03-5460-2100
- URLhttp://www.dow.com/japan/