日本映像翻訳アカデミー

Nao Fujita

藤田 奈緒さん

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Erika Honma

本間 絵里香さん

言葉を通して世界中の文化をつなぐ橋渡しをしたい

自分の得意なジャンルを活かせるのが映像翻訳者の魅力

藤田 もともと英語に興味があり、翻訳者になりたかったのですが、社会人経験もないままフリーランスになることに不安があり、最初は損保会社に就職しました。ただ、翻訳の勉強はしたかったので、早く帰れるところを探しました(笑)。

藤田 奈緒 さん

映像翻訳ディレクター

映像翻訳者は女性にとってとても働きやすい職業です。ぜひ、多くの方にチャレンジして欲しいですね

損害保険会社に勤める傍ら、映像翻訳者としての経験を積む。現在はMTC(メディア・トランスレーション・センター)に所属し、映画、ドラマ、リアリティ番組、ドキュメンタリー番組など幅広いジャンルのディレクションを手掛ける。UNHCR 難民映画祭の字幕製作総合ディレクターを務めるほか、FOX チャンネル、AXN チャンネルの番組を中心に担当。

仕事のモットー

言葉を使って、文化と文化をつなげる仕事をしているので、どの国の人が見ても、同じところで笑ったり泣いたり、同じ感情を起こしてもらえる翻訳を心がけています

仕事がだんだん忙しくなってきたころ、JVTA(日本映像翻訳アカデミー)のトライアル(プロ試験)に合格し、転職を考えていたところ、「JVTAで働きませんか」と声をかけてもらいました。今はディレクターや講師としてJVTAで働いています。

本間 私は、昼間は分析会社で働き、夜、自宅で映像翻訳の仕事をしています。大学卒業後は教育系の会社に就職し、その後、人材派遣の会社で営業の仕事をしていたのですが、スタッフさんの中に翻訳者の方がいたんです。もともと翻訳の仕事に憧れがあったので、私もやってみたいなあ、という気持ちがふつふつと沸いてきて。結局、29歳で仕事を辞め、翻訳の勉強をスタート。同時に、翻訳業務のある仕事を探し、現在の会社に転職しました。トライアルに合格して3年目。少しずつ、映像翻訳の仕事にも慣れてきたかな、というところです。

藤田 私は今、本間さんのディレクションを担当していますが、コツコツと仕事をするタイプですね。頑張っていると思います。仕事と翻訳をバランスよくやっているイメージです。

トライアルには1回で合格していますし、優秀だと思いますよ。

映像翻訳の世界は今、どんどん多方面のジャンルへと広がっており、また、映像自体、かつてはDVD だけだったものが、今はネットフリックスのような動画配信サービスが登場するなど、多岐にわたっています。こうした状況に対応できるよう、授業では、色々なジャンルに触れられるようなカリキュラムを組み、対応しています。講座で学んだ知識を、実践でどう生かせるかが、プロとして成長できるかどうかの鍵になります。皆さん、得意不得意はあると思いますが、どんな映像がきても、基礎的なスキルは一緒なので、オールマイティにこなせるようになってほしいと考えています。ただ、もちろん、本人の持っている知識を生かすことも大事です。

金融系が得意とか、料理が好きとか、それぞれの得意分野が見えてくれば、その分野をお願いすることも多くなります。本間さんには、仕事の関係から、理系案件もお願いしたことがありましたね。

本間 はい。理系の翻訳が得意というわけではないのですが(笑)、ただ、さほどアレルギーもありません。最初、そういうこともあってなのか、IT のブログを翻訳するお仕事をいただきました。会社の仕事はITとは全然違うのですが、夫がIT 系の仕事をしていたり、母が理系出身だったりと、周囲に結構理系に強い人がいるんです。せっかくいただいたお仕事だし、やればなんとかなると思って、挑戦しました。ベクトルとか3Dとか、いろんな記号も出てきて、その都度、家族の知識を総動員して、なんとか終わらせることができました。本当に大変でしたが、納期もちゃんと守れてほっとしました。今は、少しでも仕事をこなし、力をつけたいので、そのチャンスは逃さないようにしたいです。

藤田 私などは完全文系なので、理系案件は、ちょっとでも慣れている人に翻訳してもらうのがいいかなと思います。

私は最初、スポーツが苦手で、野球って、打ったら右左どっちに走るの? というぐらいに知識がなく(笑)、ドラマでも野球の場面が出てくると、さあどうしようと混乱していました。

本田さんは理系分野に対して、そういうアレルギーが少なかったのは大きいですね。映像翻訳の世界は、文系の人が活躍するイメージですが、実は理系の分野で活躍していた人が転身してきた、という事例もあります。今は、世界中の大学の講義映像が配信されるなど、映像の種類が多岐にわたり、どんな人にも自分の好きなジャンルの映像がある時代です。自分の強みを生かせる、誰にでも入り口が開かれているということが、今の映像翻訳の世界だと思うので、理系に強い人にも、ぜひ、チャレンジしてもらいたいですね。

翻訳は言葉を紡ぐ仕事なので機械に取って代わられることはない

藤田 この仕事を始めて12年。一番大変だったのは、納期に間に合わせることですね。時間がないときは寝る時間を削るしかないのですが、逆に、寝ていない頭で訳していて効率的なのか、という問題もあります。でも、1時間寝てしまって、間に合わないのは最悪ですし。

本間 私も納期のことはいつも気にしています。1年目は、どのぐらいの時間でできるのかわからず、慎重に仕事を受けるようにしていました。

本間 絵里香 さん

映像翻訳者(修了生)

いつかは、1本の映画を独りで翻訳できるよう頑張りたいです

立教大学英米文学科卒。卒業後、教育系の会社に就職。その後、人材派遣会社に転職し、翻訳の仕事への憧れを抱きJVTA に入学。現在の分析会社に転職し、トライアル合格後は勉強と仕事を両立させる日々。

仕事のモットー

面白いところを面白く、感動するところを感動してもらうため、どんなに急いでいても中途半端な仕事はしません

藤田 映像には、2時間を超える長いものから1分程度の短いものまで、様々なものがあります。短いからといって簡単かというと、そうではありません。デビュー当初、初めて訳した映画の予告編は、1分半か2分程度。これなら1日でできると思っていたら、言葉が全然出てこなくて、予想以上に時間がかかってしまいました。こんなにできないんだって、ショックでしたね。映画の予告はシーンの抜粋なので、セリフにつながりがありません。その時は本編も見られず、前後のセリフを予想しながら言葉をあてましたが、あれは本当に大変でした。デビューしたての人には、10分程度の長さで、納期にも余裕のあるものをお願いすることが多いですね。

本間 はい。最初は10分のものを1週間かけてやりました。

原文のセリフの長さに合わせて一つひとつの字幕の文字数を決めるのは予想以上に時間がかかりました。なんとなく慣れたかなと思えたのが1年後ぐらいです。今は仕事から帰ってきてから、夜、翻訳の仕事をやりますが、夫が理解のある人なので、納期が大変な時は、家事は少し手を抜きつつ(笑)。会社の方は有給を使って、迷惑にならない時期に計画的にお休みすることもあります。二足のわらじで頑張っていますが、将来的には翻訳1本でやっていきたいと思っています。

藤田 スピードがつけば収入も追いついていくし、連続ドラマなどを担当すれば、十分にやっていけると思いますよ。

翻訳の仕事はどんどん増えているので、翻訳者さんは今、求められています。最近はAI が開発され、どこまで人間の仕事に進出してくるのか、という話題もありますが、翻訳に関しては、人間にしかできないクリエイティブな部分があるので、取って代わられることはないと思います。AI は脅威ではありません。上手に使い、共存していくことが大事です。私たちの仕事の場合だと、例えば、効率アップのために、おおまかな訳をAIにやってもらい、最終的な仕上げを人間の翻訳者がやるとか、字幕翻訳のセリフの長さを決める作業はAIにやってもらうなど、作業分担することができるかも。これは、まだまだ未来の話ですけど(笑)。

先輩から後輩へ映像翻訳のヒントをアドバイス

本間 私はスピーディに訳せないのが悩みなのですが、どんなことをすれば早くできるようになりますか。訳を考えることに、どうしても時間がかかってしまいます。

藤田 映像の趣旨を理解していれば、言葉は紡ぎやすくなります。時間に追われると、言葉を埋めるのに精いっぱいになりがちですが、作品理解に時間を割くことを恐れない方がいいと思います。感情移入すること、話者と一体になること。そうすると、自分にない言葉が出てくることもあります。

何度も見ているうちに、このセリフが後半の部分の伏線だったのかなど、気が付くこともあり、さらに作品に沿った訳ができます。

本間 もう一つ、ボキャブラリーが少ないのも悩みの種なのですが。

藤田 あらゆるジャンルの作品の字幕と吹き替えをよく見るといいのでは。こんなシチュエーションで、こういう言い回しがあるんだと、気付くことがあります。覚えていなくても、一度見たものは頭に入っていて、あとで思い出せることもありますよ。たまに暇な時には、他の人の字幕を書き写すのもいいようです。自分では書いたことのない言葉を書き出してみると、それがインプットされ、腑に落ちたりします。いい表現だなと思ったら、すぐにメモすると、ボキャブラリーが増え、自分の弱みを補えると思います。手書きでなくても、パソコンで打ち込むのでもいいです。特に、あまり見ないジャンルの映像の字幕や吹き替えに触れると、自分には思いつかない表現が隠れていることがあります。

本間 好きなジャンルだけでなく、色々な作品に触れて、他の人の表現を知り、ボキャブラリーを増やすということですね。勉強になりました。さっそく実践してみます。ありがとうございました。

取材・文/足立恵子、合津玲子、鈴木理恵子
写真/三浦義昭、川崎聡子

日本映像翻訳アカデミー

海外の映画、ドラマ、ドキュメンタリー、音楽番組、スポーツ放送、企業PR 映像など、字幕や吹き替え原稿を作成する、「映像翻訳」のプロを専門に育成。海外の映像作品に日本語の翻訳を施す「英日映像翻訳科」、日本の映像作品に英語の翻訳を施す「日英映像翻訳科」、米国のロサンゼルスに留学して映像翻訳や通訳・実務翻訳を学ぶ「M-1ビザLA 留学コース」がある。各コースでは、映像翻訳の第一線で活躍している翻訳者らが指導に当たる。映像翻訳のスキルはもちろん、プロとして活躍するために必要な現場でのスキルや、就業のノウハウなども伝授する。修了生は、トライアル(プロ試験)に合格すると、併設するメディア・トランスレーション・センター(MTC)から、実際に翻訳の仕事を得ることができる。

【業務内容】

●東京・ロサンゼルス校およびアルク社との共同事業による「映像翻訳web 講座」運営

●修了生の就業支援、翻訳業務

●国内外の映画祭、映像イベントの支援など

  • 本 社東京都中央区日本橋本石町3-2-4 共同ビル(日銀前)2F/3F
  • 代表者新楽直樹
  • 連絡先TEL: 03-3517-5002
  • URLhttps://www.jvta.net